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2022.03.23

不動産相続事例

不動産相続事例

ケース1「不動産の賃料は誰が取得すべき?」

私の父は生前、不動産を有し、第三者に賃貸して賃料を得ておりましたが、3年前に亡くなりました。母は既に死亡していたことから、相続人は兄と私であり、今般、不動産を兄が取得し、預金・株式を私が取得する旨の遺産分割協議が成立しました。ただ、父死亡から3年間の賃料1,000万円について、これまで兄が保管しておりましたが、これを誰が取得すべきか話がまとまりません。賃料は、どのように扱われるのでしょうか。

A.各共同相続人が、その相続分に応じて確定的に取得します。

人の死亡により相続が開始し、生前有していた財産(不動産、預金、株式)は、原則として相続人が相続分に応じて相続しますから、本問では、兄とあなたが各2分の1の割合で相続財産を共有することとなります。
ところで、相続財産をいつまでも共有にしておくのは好ましいことではありませんから、相続財産(不動産、預金、株式)について相続人の誰がどのように取得するかを決める必要があります。これを「遺産分割協議」といい、これが成立すれば、その効力は相続開始の時にさかのぼって生ずるとされています(民法909条本文)。

従って、本問においては、相続の開始によって、一旦、兄とあなたが全ての財産を各々2分の1の割合で共有している状態になりながら、遺産分割協議の成立によって、当該不動産は、相続開始当時から兄が単独取得していたこととなります。そこで、相続開始から遺産分割協議が成立するまでの賃料については、当初の共有に従って処理すべきか、後の遺産分割協議に従って兄の単独所有によるものとして処理すべきか問題となります。
この点について、判例・学説が分かれておりましたが、今般、最高裁判所は、相続開始から遺産分割までの賃料は、各共同相続人がその相続分に応じて確定的に取得するとの判断を示しました(最高裁平成17年98日判決)。

従って、本問においては、兄が保管している1,000万円については、あなたがその2分の1に相当する500万円を取得する権利を有していることとなります。


ケース2「現在、母が住んでいる実家は売却が必要?」

父が亡くなり、遺産としては母が住んでいる実家(不動産)以外に特にないのですが、相続人の一人である長男が相続分通りの財産を取得することを希望しています。物件は売却しなければならないのでしょうか?

A.代償分割が適しているでしょう。相続人間で十分な協議を。

被相続人が遺言をしていなかった場合、相続人全員で、被相続人の遺産を分割することになります。遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割及び共有分割の4つがあります。

〈遺産分割の方法〉

  • 現物分割…各相続人が不動産、動産、預貯金等の遺産を相続分に応じて現物で取得する方法
  • 代償分割…ある相続人が遺産の全部又は一部を取得し、その代償として他の相続人に対し相当額の金銭(代償金)を支払う方法
  • 換価分割…不動産等の遺産を売却し、その代金を相続人が取得する方法
  • 共有分割…遺産を相続人の共有とする方法

遺産分割は、現物で分割することを原則としていますが、不動産そのものを現物で分割することは、よほど不動産(土地)が広くないとできないことであり、本件では、現物分割の方法によることは難しいと考えられます。また、換価分割の方法では、不動産を売却することになってしまいますが、お母様が居住する不動産がなくなってしまいますので、避けたいところです。

また、共有分割は、共有状態を残しておくことになり、将来その解消手続が必要になりますので、これも避けたいところです。

そうすると、代償分割が適当ということになりますが、その場合、お母様において代償金を用意する必要があります。代償金は、他の相続人の相続分に相当する金額を基準としますので、不動産の評価をきちんと行い、他の相続人と協議を重ね、その額や支払方法を調整する必要があります。

代償金を用意するのが困難な状況がある場合には、相続人の合意によりお母様がご存命の間の不動産使用を認めた上で、共有取得等の分割方法も検討する方法もあります。いずれにしろ、相続人間で十分に協議し遺産分割を進めて行く必要があります。


ケース3「相続した空き家どうやって分割しよう?」

私たちは3人兄弟です。数年前に父が亡くなり、そのときに母が相続した不動産の中に、空き家が有ります。

先日、母が亡くなり、財産を兄弟でどのように分けるかを話し合っています。兄弟間では、その空き家は将来的に売却したいということで意見が一致しています。不動産は、共有名義にしないほうが良いと聞いたことがあるので、どのように相続しようか迷っています。何かアドバイスなど有りますでしょうか。

A.まずは、その空き家が売れるかどうかを確認してください。

相続で空き家を取得するケースは、とても多いですよね。国土交通省が発表した「平成26年空家実態調査」では、空き家を取得したきっかけの52%が相続での取得だそうです。

ここで、不動産を共有名義にしないほうが良いというのは、主に将来的に揉める可能性があるということ、その後の相続があった時に共有名義人が多くなると意見が一致していても手続きが大変であることが主な理由です。

今回の場合は、近いうちに売却をすることの合意ができておりますので、共有名義にしても良いかもしれません。

ですが、注意が必要です。その空き家が売れない可能性もあるからです。その場合、先ほどの問題点が復活してしまいます。まずは、その空き家が売れる可能性があるのかを確認してください。

空き家を売却したいという時には、共有名義にしておき、売却額を分け合うのが良いでしょう。このとき、相続人の一人が相続して、売却額を他の相続人と分けたいとなった場合には、贈与税が発生することも有りますので、注意してください。

相続された不動産を登記する際には、売却可能な不動産であるかどうかも合わせてどのような名義で登記するのが良いのか(どう遺産分割をするか)を検討してみて下さい。


ケース4「まだ相続していない認知症の母の不動産を売却できますか?」

認知症の母がおります。母が有している不動産の売却を考えております。まだ相続しているわけではないのですが、売却は可能でしょうか?

A.不動産の売却は、所有者本人の売却意思確認が必要です。

お母様にまだ判断能力や意思の確認ができる状態なら可能ですが、不動産を売却する場合、所有者本人の売却意思確認が必要ですので、それができない状態ですと売却することが原則できません。売却する為には裁判所にご本人に代わって契約する成年後見人の申立てを行う必要があります。また、不動産を売却することも裁判所の許可がなければできません。なぜなら、ご本人の財産は原則、ご本人の為にしか使うことができないからです。


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